1B第19回 日ハム新人戦準決勝(vs浦安ドリームスター) 決勝(浦安ドルフィンズ)

1B 第19回 日ハム新人戦準決勝(vs浦安ドリームスター)

 ○10-4

 決勝(vs浦安ドルフィンズ)

 ○9-6

  

 新チームが始まった冬、1Bは監督の下でひとつの誓いを立てました。「限界という壁を越えに行こう」。それは厳しい道のりでした。続かないボール回し、断ち切れる連携プレー、勝てない日々。それでも子どもたちは誓いを強い意志に宿し嵐の中を進んで行きました。必死で球を追い、全力でバットを振り続けよう。1歩ずつ、時には半歩でも、前へ。季節は移ろい、うだるような暑さとなったこの日、誓いのときから監督が緻密に描いていた航海図がぶれることなく差し示していた今季の天王山、日ハムWヘッダーを迎えたのでした。「君たちなら、できる」

 

 準決勝、チームは心配になるほど冷静な雰囲気をまとっていました。でも、クールな姿の内側には熱い集中力と仲間たちと連なる思いが秘められていたのです。魂はバットに乗り移り、序盤から打線が火を吹きました。青空の向こうに届きそうな大飛球のエンタイトル・ツーベース、強く振り抜いたバットと全力疾走で生まれるヒットの数々、外野を突き破るランニング・ホームラン…。塁上で次々とガッツポーズが華開き、スタンドからオール・ベイマリの大歓声が濃紺のうねりとなって届きます。波に乗るエースは美しい立ち姿を自ら裏切ってえぐり上げるようなストレートをミットにねじ込み、ベンチでは捕手が「手が痛い」と笑います。冴え渡る采配の下、打線は得点を重ね、鍛え抜かれた守備網とクローザーが流れを渡さず、ゲーム・セット。

 

 強敵を倒した子どもたちですが喜びは控えめです。「あとひとつ、あるから」。君たちは最初から分かっていたんだね。心は熱く、プレーは冷静でなければこのWヘッダーは戦い抜けないことを。むせかえりそうな夏の熱気に、凜々しくなった少年たちの色香が混ざります。

 

 

  決勝。それは文字通り死闘となりました。初回に3点を取られる苦しい立ち上がり。懸命に戦う子どもたちはベンチに戻るたび、頬を赤く染め汗をしたたらせました。けれども首に巻いたタオルの奥ではどの目も鋭く試合を見つめ、声を振り絞って「絶対に逆転するぞ」と仲間に声援を送るのでした。修羅場なら去年幾度もくぐってきた。この戦いに勝つために雨の中でもバットを振り続けてきた。僕たちなら、できる―。その時は3回表。再び一塊の炎となった打線がうなりを上げ、一挙5点を奪取し試合をひっくり返しました。

 

 でも勝負はまだつきません。酷すぎる暑さの中、四球のコールにも顔色一つ変えず先発投手が歯を食いしばって投げ続けます。その成長ぶりに胸を熱くするベンチとスタンドには「頑張れ、頑張れ」と祈りが広がりました。同点に追い付かれた後の5回表、少年野球では珍しい敬遠があり、いつも愛くるしい顔をしているネクスト・サークルの打者が戦士のような表情を浮かべました。「思いっきり振ってこい」。監督の声に、集中力はもう一つ上のギアへと上がります。初球。渾身の一振りは風を切り裂き、白球は糸を引くようなライナーで空へ。この回3点を取り、最後のマウンドには再びエースが立ちました。

 

 守備陣も、ベンチも、スタンドも、みんな必死で声を出しています。二死2、3塁。体力はとっくに底をつき、精神力は削り取られました。けれど今こそ強い意志を一つにして、この壁を越えろ―。極限状況の中でも子どもたちは冷静でした。四球で飛び出した3塁ランナーにいち早く気付いた捕手がボールを持って追い詰め正確に送球、しっかり受け取った三塁手が鋭くタッチをして、ゲーム・セットです。最後を決めたのは、何度やってもうまくいかず練習を繰り返して完成させた連携プレーでした。

 

 喜びを爆発させるかと思いましたが、子どもたちはやっぱり控えめなガッツポーズとはにかんだような笑顔でした。どうして?「さすがに疲れちゃった」。そうだよねえ。

  

 自分の宝探しの旅はどうでしたか。壁を越えた先にどんな景色が見えたでしょうか。試合中でも成長できる君たちと、この道のりを一緒に歩める私たちも成長している気持ちです。それから、栄冠を勝ち取ったのは勿論君たち自身だけれど、感謝の気持ちを忘れないでください。バッティング・ピッチャーを務め一瞬で一人ひとりを見抜き、それぞれ違うアドバイスをくださった総監督、基礎を丁寧に教えてくださった4年生までの監督、卓越した技術指導で個性を生かしたスイングを作りあげてくださったOBコーチ、声援を送り続けてくれたベイマリ・ファミリー、練習の場を提供してくれたソフトボールチーム、お弁当を作りベンチでうちわを扇ぎ続けてくれたお母さんたち、遠く離れた場所でも君のことを考えスタンドでは涙を流してくれるお父さんたち。そして何より、凄い技術で練習をつけてくださり、流れを読み切った作戦を駆使して導いてくれた、熱くてクールな漢(おとこ)の中の漢の監督に。まだまだ書ききれないけど、野球は人生と同じでたくさんの支えと仲間がいるからできるものだと思います。

 

 また新たな旅が始まります。チャレンジの主役は君たちです。夢に向かって、さあ出発だ。共に歩もう! (参照文章:ベイマリHP「チーム紹介」→「監督・コーチ」)